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■ 職場事例097
大手製造業であるA社の生産拠点の一つであるY事業場では、産業医が事業場を訪問した時に、各部門の超過勤務面談を順次行っている。
○月に訪問した際に、B社との契約で開発中の機器設計部門C課で超過勤務面談を行った際、申告をはるかに上回る過重労働の実態が明らかになった。C課では12名の課員の多くが1年近くにわたって毎月200~250時間の時間外勤務に従事していた。
その背景を調査すると、C課では製品についてB社から再三にわたり改良を要求され、部品の外注業者と共に調整を繰り返していた。B社や外注先との技術的な打ち合わせが必要なため、技術職は連絡を受けた場合に備えて深夜まで職場に残っていた。C課の課長は研究所出身のため現場経験が少なく、組織管理能力は十分でないと評価されていた。また、課長は部下達に労いの言葉をかけることはなく、また、不満に耳を傾けることもなく、厳しい口調で休日出勤や深夜までの残業を強いることが多かった。このため、課員達の間には会社と課長への憤懣が鬱積していた。
そこで、産業医は同日中に衛生管理者にこの問題について非公式の会議を要請し、産業医の見解を述べた。その後、人事部長を交えた会議が設定され、人事部長から開発の期限はあと1ヶ月に迫っていることなど産業医に対してC課の状況についての説明があり、実施可能な対応策として、22時以降の残業を禁ずること、日曜日の出勤を禁ずること、課員らに順次一日の有給休暇を取らせること、課長に対し課員らへの精神面への配慮の必要性を指導することが指示された。
後日、毎月250時間もの過重労働が1年も続いたという異常事態の原因が徐々に解明された。それによると、当時、海外プロジェクト内部で処理していた案件として、海外の生産拠点の立ち上げが難航しており、現地駐在員の技能と人数では不十分と判断されたため、常時1~2名のC課課員らがB社の機器開発という本来業務のほかに交代で海外向けの指導に当たっていたという事実が判明した。すなわち、C課における過重労働の原因には、1)B社と外注先との技術的な打ち合わせと調整業務による拘束、2)海外の生産拠点の立ち上げ計画の不備に伴う支援、3)C課の課長の組織管理能力と精神的配慮の不足の3つが考えられた。
その後、海外の生産拠点については計画全体が見直されることになったこと、技術面で豊富な経験のある派遣社員が2名補充されたこと、さらに、社員の技術職が増員される計画が発表されたことから、C課員への負担が実質的にも心理的にも軽減された。また、C課の課長に対しては、人事部門からこれまでの困難な課題に対する組織的な努力が評価されるとともに、今後は社員の健康の確保にも努力するように指示があった。
これらの結果、現在、C課では、週に一度は定時退社を促す制度なども導入され、超過勤務の実態は格段に改善している。